Shibahama

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For the All〜Shibahamaが届けるエンターテイメントの世界

北沢タウンホール

東京都世田谷区の北沢タウンホールで、11月29日(水)『 桜色の風が咲く』の上映と、 様々な分野で活躍するアーティストを招いたトークセッションが開催された。

映画『桜色の風が咲く』

この作品は、視力、やがて聴力を失いながらも、 世界で初めて盲ろう者の大学教授となった、東京大学福島智教授の実話を基に描かれている。この映画に感銘を受けたShibahamaの田中氏が、モデルとなった福島教授に、エンターテイメント業界はどうしていくか、業界に携わる視覚障害者や、ろう者の当事者と話し合い、 気持ちを届けたいと企画された。(*盲ろう者とは目(視覚) と耳と(聴覚)の両方に障害を併せ持つ人」)

登壇者

 まずは映画を鑑賞したあとに登壇者がそれぞれの感想を伝えるトークセッションを開催する予定だった。登壇者は、俳優のあまりかなりさん、落語家の錦笑亭満堂さん、白杖ダンサーのMORIKO JAPANさん、ろう者・俳優のレオさんの4名。

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トラブル発生!

しかし、映画上映中に機材トラブルがあり、台詞の音だけが会場で 聴こえなくなった。

主催者であるShibahamaの担当責任者は、上映を中断し、 技術スタッフが早急に原因を調べたが、 現場で復旧はできなかった。今回の催事の趣旨は、 盲人もろう者も視覚障害者も聴覚障害者も、共に映画を楽しめるように『 バリアフリー上映会』を行う企画である。 Shibahama代表の田中氏は、 時間内に機材復旧ができないと判断すると、 会場の観客に第一回目の上映会の中止を告げた。

(事後の検証により、会場の音響ミキサーの設定トラブルであったことが判明した)

緊急トークセッション!

トラブルによる中断中に、客席で鑑賞していたスピーカーゲスト 3名が舞台にあがり、即座にトークを繰り広げた。それは「 エンターテイメントに関わり、今日話し合いに集まった我々が、観客をお待たせする分けにはいかない、このハプニングも、エンター テイメントとしてとり込もうと考えての判断」とのことだった。

急な進行役を務めたのは、あまりかなりさん。俳優であり、 映画の主題歌も担当、区議選に立候補した選挙経験や、映像プロデューサーなど、多岐に渡り活動している。

そして、白杖のダンサーとして、 パラリンピックの閉会式やブレイキン世界大会にも出場するMORIKO  JAPANさん。進行性の網膜色素変性症で視力が0.02に。 薬剤師として働きながら、NPO法人LEAVE NO ONE BEHINDの代表でもある。

もう一人は、俳優でろう者のレオさん。

目で見る文化で育ち、 第一言語が日本語とは異なる日本手話。

ろう者の役を当事者として演じようと、映画やCMで活躍する。

エンタメを考えた時、どのように楽しんでいるか、カベを感じることがあるか尋ねられると、レオさんからは、

「映画や舞台が好きでよく観に行くのですが、 日本語字幕が無いものが多く、 内容を全て理解し楽しめたとは言えないのですが、

演技を見ることに集中しています。 台本を事前に見せていただけないかお願いをするのですが、 著作権の関係で難しい場合があります。

最近では、期間限定で字幕つき上映があったり、 字幕メガネなどありますよね。」

レオさんからろう者だけではなく、 聴者も字幕があった方が助かるような意見があると聞いたことがあ るのが、実際どうか尋ねられたあまりさんは、

「個人的には、聞き取れなかったり、難しい会話の時などにも、 字幕があるとわかりやすいです」と答えていた。

字幕のない海外の映画をみて、 内容隅々理解できて楽しめたといえない人は、少なくないだろう。

一方、MORIKO JAPANさんは、

「自分にはブレイクダンスの世界が、エンターテイメント、ブレイキンの世界で障害をカベに感じることはない。 ただクラブでも視覚、聴覚障害がある人は少ないか、いない」と話す。

日常的には、周りの人の心の部分、そこにカベを感じることはある という。
「どう接していいか、何をしなきゃとか困っちゃったり、 逆に面倒と思われたり、そのあたりのバリアがなくなれば、 エンタメも、皆が楽しめるようになるんじゃないか」と語った。
「障害者権利条約というのがあり、自分が大事と思っているのは、 障害の社会モデルという考えです」(MORIKO)

障害の医学モデルと社会モデルという概念がある。
医学モデルというのは、目が見えないとか、聞こえないという個人の心身機能による個人的な問題。社会モデルというのは、社会的な障壁を社会全体の問題として捉える。
階段しかなかったら車椅子の人は一人で2階にはいけないが、エレベーターがあれば、2階にいける。車椅子の人が変わったわけではなく、社会(環境)が変わる。
眼鏡やコンタクトをしている人も、その技術がない時は、障害といわれたかもしれない。

「テクノロジーや社会が変わることで、 障害の意味は変わってくる。
特に日本は、これから超高齢化社会で、目が見えづらくなったり、 耳が遠くなるとか、歩くことが大変になる人も増えていく。
障害を持つ人の視点が広がれば、新しい発想、発見に繋がるし、 便利なものがでてきて、社会もよくなると思う。」
と、社会や、環境の障害を無くしていく必要性を強調した。

その話を聞いたあまりさんは、

「今日元気に歩いていていても、いつ何がおこるかわからないし、 想定して、知っておいていいし、お互い様だし、 それを考える人が多い世界になっていけたらいい」と続けた。

レオさんも、障害がある人に便利なものが、そうでない人にも役にたつなら、選択肢が増えるということは誰にとっても良いことと語られた。

突然のトラブルに、急遽登壇した3名の出演者陣が対応し、視覚障害のあるMORIKO JAPANさん、ろう者のレオさんが、通訳を交えながら、 あまりさんとトークを展開したことは、今後のダイバーシティ(多様性社会)の実現への感触を掴めることができ、 可能性を感じられたステージだった。

その後のトークセッション本番

その後の本番のトークセッションでは、落語家の錦笑亭満堂師匠を交え、登壇者4名と手話通訳2名、司会はShibahama代表の田中氏が務めた。

錦笑亭満堂師匠は、お笑い芸人から落語家に転身、今年7月に真打昇進すると、全国を真打昇進披露興行をスタートさせた。

全国24ヶ所をまわり、「とりあえず、おさえちゃったんですよ」 と、来年の2024年1月に、 日本武道館での開催が告げられると、 会場からは驚きの声があがった。

司会の田中氏からは、Shibahamaのエンタメ・ギフトが紹介され、児童福祉施設の子どもたちをエンターテイメントショーや舞台に招待するプロジェクトや、介護業界での訪問型エンターテイメント「訪問らくご」などの活動が報告された。

そして、"すべての人が楽しめるエンターテイメントをつくる" ことをテーマに話しが始まると、あまりさんから「実は先程、 上映がとまるアクシデントがあって、 もう3人で話題にしちゃったんです」との報告が。

驚いた表情の師匠であったが、田中氏から「 配信もあることですから、改めて仕切り直しましょう」 との提案で、客席と地続きのフラットな舞台で、"すべての人が楽しめるエンターテイメントをつくる" ためのトークセッションは始まった。

 

 

******ぜひご視聴ください******

『For the All』トークセッションの映像およびコメント書き起こしテキスト

 

〈お詫び〉映画にご来場にいただいてご希望されたお客様全員にご入場のチケット代金をご返金をさせていただきました。せっかくお越しいただいのに申し訳ございません。ー主催者よりー

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