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第1回『訪問らくご』が開催されました!
世田谷区の『博水の郷』、普段はデイサービスに利用されるフロアに、本格的な高座が設営されると、ご担当の部長から、「わっっ、すごい…」と、思わず声がもれました。
本日の出演者は、橘家富蔵師匠。
コロナ禍以降初めての、全利用者が参加するイベントに、職員の方々の期待が膨らみます。
機材やステージ演出には、師匠自らが照明や高座の背景、マイクの位置や音量調整、最前列の客席の位置を念入りにチェックし、そして、車椅子の利用者さんを案内する導線を、職員さんと確認します。
師匠の仕切りは、さすがプロ中のプロです。
あっという間に『博水の郷』のデイフロアが寄席に早変わり。
今日は施設近くの「カマタ食堂」からお昼をテイクアウト。今回のイベントスタッフも、腹ごしらえをはじめます。私もご馳走になり、現場の美味しいお弁当を頂きました。
1時30分、一番太鼓が聞こえてくると、利用者さんのご入場です。
車椅子を押す職員さんからは、いつもと違う誘導に、緊張感が漂います。
「一番前にする?」
「いいの?こんな近くで?初めてだわ」
徐々に集まる利用者さんたちの声が、会場を明るくしていきます。
「なかなか観れないよねぇ」
「特等席だ」
「寄席なんて何年ぶりかねぇ」
「チラシのこれ、今日やるの?」
「テレビやね、ラジオでね、前は聞いたけど 生の落語は初めてだから、嬉しいねぇ」
ワクワクが伝わってきます。
二番太鼓が鳴り、出囃子が流れてきました。
いよいよ富蔵師匠のご登場です。
軽妙な語り口ですすむマクラに引き込まれ、どっと笑い声が響きます。お腹を抱えたり、手を叩いたり、顔を押さえたり。マスク越しにも、笑顔が溢れてきそうです。
師匠の掛け声で、一緒に拍手のウォーミングアップ。力強い音になってきました。
職員の皆様の笑いも止まりません。
本日の演目は"時そば"
有名な古典落語、懐かしくご覧になった方も多いことでしょう。
師匠の名演に、「上手にすするねぇ」
笑い声とつぶやきが聞こえてきます。
おなじみの台詞や、声の調子を楽しむお客様。「ひぃ、ふぅ、みぃ…」と、指を動かしながら数える人もいました。引き込まれています。
本題のあとには師匠からのクイズタイム。
「全問正解者には、施設からハワイ旅行のプレゼント!」
師匠のむちゃぶりに
「えぇ⁉︎ (聞いてない〜)」施設長が慌てる場面も。
ひねりのきいた設問に、いろいろな答えが飛び交って、かなり盛り上がりつつも全問正解には至らず、関係者も一安心です。
最後は皆で三本締め。
会場は温かい笑いに包まれました。
「楽しかったね〜」
「思わず、ありがとうー!と言っちゃった」
「久しぶりに笑わせてもらった」
「聞けてよかったね」
拍手で師匠を送りだすと、観客の皆様も、順番にお部屋に帰られます。その時の職員の方々のてきぱきとした誘導に、介護職のプロの技を見せて頂きました。
今回の訪問落語にお集まりの人数は50人以上。コロナ禍もあり、こちらのホールに初めて入った利用者さんもいたそうです。
クイズに1問正解の部長は、師匠からのサプライズプレゼントの手ぬぐいを見ながら
「私が一番楽しんじゃったかも」と肩をすくめます。
最後に会場から出られた女性は、
「今、なんどきだい?」と
チャーミングな笑顔を向けて、ゆっくりお部屋に戻っていかれました。
(取材&撮影:律筆)
つづいて、『第二回訪問らくご』2023年10月22日(日)14時開催。南麻布シニアガーデンアリスにて落語立川流真打の《立川志ら乃》師匠が登場!盛り上がりました。